車内での路上生活を送るホームレスとなり、福祉機関の助けによって期間限定の住まいでその日暮らしを送るゴリアテ。
期間限定の仮住まいで借りたアパートは住みやすい良い家…とは言い切れなかった。部屋に充満するドブの匂い、廊下も屋根もボロボロでゴミステーションは必ず何者かに荒らされ新たなゴミが投げ入れられていた。
今の住処は期間限定なので新しいアパートを借りなければいけない。だが私には連帯保証人がいない。普通の物件会社では連帯保証人が必要な部屋しか載っていなかった。今サポートを提供してくれている組織が賃貸会社と連携して住居を紹介してると言うのでそれに頼ることにした。
ここ数ヶ月で30万の出費だ。それだけではない新居に移れば家電代に家賃に引っ越し料金もかかってくる。故に条件は家賃4万代だ。
しかし家賃が低ければ低いとそれだけ質も悪くなる。まず建物が古い。風呂はバランス釜と呼ばれる追い炊きしないと水しか出ない風呂で当然シャワーも水しか出ない。
バランス釜ではない普通の水回りでトイレと風呂が別。そういった条件で探していくうちに、候補が3つに絞られた。
①2D 保証会社の審査が一番ゆるい。和室
②1DK リフォームしたばかりで内装が綺麗
③2DK 洋室 保証会社がすごく厳しい、駅近のファミリータイプ
私は②を本命に内見を行なった。
内見当日、①のアパートは内見ができず結局違う物件を紹介された。
前に住んでいた人が退去したのだが部屋の状態がそれはもうすごい状態だったらしい。悪い意味で。
なので似た違う物件を内見する事になった。
実際見た①の代わりとなる物件は想像以上に酷いものだった。外装は古くて防犯の面からも安全性に不安を感じる。中はもっと酷くてトイレ、風呂ともに古臭くて酷く汚い。室内に充満するのは言葉には形容しがたい独特な匂い。
家賃は低くてもここには住めない…そう思った。
続いて本命である1DKだけど部屋が綺麗な物件に行った。
②の物件は内装は確かに綺麗だった。王室を思わせる作りでとにかく豪華だった。キッチンが真新しいシステムキッチン。これはすごい。
だけど前の入居者が喫煙者だったせいか壁がヤニで染みていた。そして床も色褪せていた。
ベランダは隣の家のせいで全く日が入らず洗濯物を干すには厳しそうだった。しかも隣の家はコケが生えててジメッとしていた。綺麗だけどどこか清潔感がない。
何より嫌だったのが外観が古くハエのたかった傘が家の前に立てかけられていた。要は汚らしかったのだ。でも仕方ないかなと半ば諦めでここにしようと思った。
現実に打ちひしがれつつも一番期待のしていない③のアパートに向かった。ファミリータイプのアパートだし一番汚いだろうと踏んでいたが実際に見たアパートはなんというか…その…
思った以上に清潔だった。
内装も外装も綺麗だった。フローリングされた床はピカピカで洗面台も風呂場もトイレも新品同様だった。窓からの景観も綺麗だった。
日光もよく入るその姿は私のかつて住んでいたアパートと瓜二つだった。間取りも家賃も全部同じ。
帰ってきてしまった。別れを告げたかの部屋。同じ間取り、同じ家賃、もうここには戻ってこないとさよならを言って離れた場所だったのに。
なんとも言えない気持ちだった。
私は結果的に③の部屋を選んだ。だがこの部屋には一つ大きな問題がある。
保証会社の審査が異常なほど厳しいのだ。普通に正社員で働いていても落ちることがあると説明された。
収入、貯金、役職、さまざまな面を見られ書類をその都度要求してくるらしい。
とりあえず受けるだけ受けてみるが通らないかもしれない、と。私は正社員ではあるが休みが多くて比較的自由で至れり尽くせりである代わりに年収自体は多くなかった。それに単身の女だったし役職があるわけでもない。落ちる理由は探せばいくらでもあった。
3日経った。
なんと審査はあっけなく通った。
賃貸会社の人も福祉組織の人もみんな驚いていた。電話もなかったんですか。本当に書類だけで通ったんですね。と所員の人が言った。
あれほど脅された割にあっけなさすぎた。
実は私は社会人になってから10年ほど同じクレジット会社のカードを生活費の引き落とし先として使っていた。
生活費から無駄遣い、趣味、ジュース1本まで全ての支払いをクレジットカードで行なっていた。色も金。
そう、ジュースの110円一本買うだけの買い物にクレジットを使っているクレイジーなコンビニ客はわたしです。
賃貸の保証会社で一般的に厳しいと言われている会社は俗に言う信販系とも呼ばれクレジットカードの運用も行なっており、かなり厳密な審査をする。年収、貯蓄、携帯電話の滞納履歴、クレジットカードの滞納…。
逆に言うとクレジットカードの信用がとんでもなく溜まっているとたとえ無職でもあっけなく審査通過することがあるらしい。
長年クレジットカードで生活費を払っている私の利用額と信用履歴はとんでもないことになっていたのだろう。
日本ではクレジットカードが嫌われがちで、クレジットカードは負債、借金とまで言う人もいる。
クレジットカードを使うと破産するぞ!借金取りがくるぞ!使いすぎて返せなくなるぞ!とよく先生や親から教わったことはないだろうか。
我が家でもそうで母親からクレジットカードは危険だと教え込まれた(その効果は全くと言っていいほどなかった結果に終わったが)
でもだれもクレジットカードで信用が蓄積されるなんて教えてくれなかった。賃貸の審査にクレジットカードの使用歴がプラスされるなんて教えてくれなかった。
役所の人がクレジットカードの信用と保証会社の審査の仕組みについて教えてくれた(宅建を持っているので詳しいらしい)
使い道によっては自分に正しく利益が帰ってくることもあるんだなと実感した出来事であった。それに気付くまで10年かかったけど。