実写版の美女と野獣を見てきました。感動の余韻がなくなりません。
実写版の感想を書いていきたいと思います。見たのは勿論字幕版。
- ベルは変人で回りに馴染めないぼっちキャラ ※深刻です
- アニメ版よりも深刻かつ陰鬱に描かれた呪い
- 一般論より教養を重視する野獣の性格や考え方も繊細に描写
- ガストンがただの悪役ではない
- ガストンの付き人ル・フゥが良心的 ※元からだけど
- 村人が押しかけた際の反応が「悪党だ!」と冷静
- アニメのいいシーンはそのままに描いた美しさ
- 野獣の呪いが解けても全く違和感がない
ベルは変人で回りに馴染めないぼっちキャラ ※深刻です
美女と野獣って主人公のベルの美しさばかり描かれがちなのですが、今回は各登場人物の個性や性格がかなり深く掘り下げられています。
アニメ版を見て色々考察してこうなんじゃないかと思っていたのがそのまま細やかに描かれているんですね。
特にベル。今回は美しい美女というよりも「綺麗だけど変わってるよねあの人」と言ったような扱いを受けています。アニメ版だと「ちょっと変わった美しい女性」って印象で描かれていたのに実写版だと「かわいいけど頭おかしい」と嫌な人扱いです。
ベルは読書家の本の虫ですが、知に重点をおき、奇抜な発想で家事を簡略化し村の女の子にまで文字の読み書きを教えようとする性格です。
現代社会では読み書きは当たり前ですが、小さく閉鎖的な村では異端的な行為。女の子に字を教えるということが大層おかしな行動だったのでしょう。村の住人とケンカしてしまいます。
これは日本も同じでしたよね。古い時代では女子は学校にも行かせてもらえない風潮がありました。
村人にとってベルはおかしな人。非常識で本なんかよんで奇抜な発想で洗濯機を作るような変人です。
博識で頭の良く奇抜な女性というのは煙たがられます。男性であれば奇抜で新しい発想を生み出す例えてみるならば教授のように好意や尊敬の的になりますが、他者との同調や無個性を求められる女性にとって頭の良さや発想力は奇異にしか見られません。
女性の場合、教授のような頑固さや理知的さは面倒で非常識な女扱いされてしまいます。物語では「早く結婚しないと行き遅れになる」や「女に勉強は不要だ」などと現代社会でもよく見られる古い考え方が色濃く描写されていました。
他者と折り合いの悪いベルの深刻な悩み。現代社会と照らしてみても非情に現実的です。このあたりはアニメだとコミカルな印象になってしまいましたが実写版だからこそできた表現ですね。
ベル「結婚なんてするか!こんな小さい村は狭すぎる!勉強してパリに行くんだ!!私は時代を動かす先駆者になる!夢はでっかく地球サイズだ!」
アニメ版よりも深刻かつ陰鬱に描かれた呪い
城の家臣や王子に呪いがかけられ、解呪の条件は愛し愛されるという条件なのですがアニメ版よりも深刻さが伝わってきます。
何が一番深刻って言えば、終わりのときがもうすぐそこまで迫っているのに野獣は外にも出ようとせず落ち行く花びらをずっと見つめて終わりまでの一時、一時を惜しんでいるんですよ。
このシーンは本当に切なくなりました。怪物になるのは恐ろしい、終わりのときが目の前にある、だからこそそこから動けないんですよね。花びらが落ちる一瞬が本当に狂おしいほど惜しいんです。
でもそれでも終わりのときはやってくるわけで、無気力である自分も許せない。終わりのときは残酷にやってくる。時が有限であることを薔薇の花びらは教えてくれます。それは残酷且つ無情に。
それでも野獣はその場から動けない。だって怪物になってしまった自分を愛してくれるわけがないじゃないですか。人と接して傷つくのは怖い。外に出るのは恐ろしい。友情とかそういうのならまだしも愛なんて大きなものが手に入るわけがない。実写版の呪いは本当に深刻だったなあ。
一般論より教養を重視する野獣の性格や考え方も繊細に描写
美しいものや人を集めていたという過去を持つ野獣ですが、美人設定のベルに対しても誰に対してもまったく優しくありません。横柄です。怒鳴り散らします。ベルの父ちゃんにも美人のベルにも怒鳴り散らします。
ベルの父ちゃんは城のバラを盗んで野獣に投獄されてしまいます。元王子である野獣にとって物を盗むという行為はそれほど穢れた忌まわしい行為に見えたのでしょうね。だって腐っても王子だし。父親からの影響もありましたが高潔な人間ほど犯罪に対する嫌悪感は強いです。
野獣もなんだかんだ内面を見てるところがあり美人だから許してあげるよ見たいなノリは全く見せません。かわいい女の子を見てニヤつくことすらしない。
口を開けば何かと「あいつは囚人だぞ!」です。女性に対して恋愛対象にもしようとしなかったのは逆に面白かったです。中盤まで犯罪者の娘呼ばわりでしたから。
そしてなんやかんや一緒に生活する野獣とベルですが、二人の仲を深めたのは料理やら外見やら美しい服やらではなく「趣味が合う」という点だったんですよね。
本の虫らしく相手が物語りや小説が好きかどうかもわからないのにロミオとジュリエットの話を出すベル。野獣がそれに乗ったときのベルの嬉しそうな顔と言ったら!
今まで誰にも理解されなかった趣味を始めて理解してくれたのが野獣だったんですよね。野獣は野獣で教養として本を読むのは当たり前のことだったからそんな自覚はないし、普通に散歩に行くようなノリで図書室をベルにあげちゃいます。
ギリシャ語以外の本は読んだという何気ない一言に感激するベル。えっ!何この人!そんなに語学力があるの!?尊敬の眼差しで野獣を見つめながら図書室に感激するベル。やっぱり理知的で頭の良い人が好きなんだろうなあ。
アニメ版ではベルの気を引くプレゼントとして図書室をプレゼントしますが、実写版では野獣が「俺はほとんど読んだからお前にやるよ」的なノリで良かったです。
物とかそういうので釣って惚れさせるんじゃなくて野獣の内面に惚れる感じがよかった。
野獣の傲慢ちきな悪いところも、教育を受けたからこそ他者に寛容だった点も、高潔だからこそ盗みを許さない厳格も良く描かれていました。
ガストンがただの悪役ではない
アニメではガストンが徹底的にヤな男として描かれていましたが、映画版のガストンは割りとまともな良い男です。
美人の女性だったら誰でもいいわけでなく「好きな女」と「そうでない女」は明確に分けて接しています。
ベルに対しても一般論で諭し、世間的な女性像で自身の妻になれと説得しようとしています。キャベツを踏み潰したりなんかイラっとする男ですが原作と比べると割とマトモです。本も捨てたりしないし。
ただこいつが最もヤバイ点は戦争・殺人・血・夫を失った未亡人、そういったものに精神的安寧を感じている点です。
ガストンに対して途中まで好感触を持っていたモーリスも一瞬にして態度が変わります。こいつはヤバい男だ……。
ただこの時代では悪いことではないんですよ。戦争や侵略が多い時代、彼のような男性はリーダーシップを発揮して悪と戦う英雄的な要素を持っています。
悪と戦う正義の人物像と教祖となりうる邪悪な怪物をあわせた実に人間的な男性です。
ガストンの付き人ル・フゥが良心的 ※元からだけど
実写版ではル・フゥが割りと良心的です。アニメ版ではお調子者でノリの良さで侵略するようなキャラでしたが、冷静さが加わったことで正常な判断を下せる人になっています。
アニメと実写で印象が変わる人なのではないのでしょうか。でも彼ってアニメ版でも割と冷静に物事をよく見ている人で、ガストンに対しても「フラれたんだ?もう諦めたら?」「どうせこんな作戦うまくいきっこないから帰ろうぜ」的なノリで接する人なんですよね。
ベルとガストンの相性が良くないのも割りとよく分かっていたり。「えーでもあの子は……」なにか言いたげに口を挟もうとするフウ。
実写版ではそれがかなり細かく描写されていて、ノリノリで城に攻め入る村人たちとは違い躊躇ったり常識人的です。
集団真理を利用して戦争を仕掛けるガストンを見て「ここにもう一人の野獣がいる」とつぶやいたりひどく良心的。
彼は村人とはちがいガストンという人物を一番理解していました。ヒーローとしての彼も怪物としての彼も理解して付き添っていました。だからこそ彼の恐ろしさも分かっていたのでしょう。
嫉妬に狂ったガストンはル・フゥの話を全く聞こうとしません。殺しにかかってくるような恐ろしさです。
彼の一番の友人として彼と共に城を襲うか、友を止めるかで悩み苦しみます。
村人が押しかけた際の反応が「悪党だ!」と冷静
村人たちが全員で押し入ります。それを見て一言「悪党だ!」
普通の人ならビビって怯えてしまうような事態でも城の従者たちは腐っても城に仕えている人たちなので急襲にも冷静です。
迎え撃つぞーとやる気満々。このあたりにやっぱり彼らは城の人間なんだなあと感じさせます。攻められることに慣れており酷く冷静。村人が襲い掛かってきたくらいでは動じません。アニメでもそうでしたけどね。
アニメのいいシーンはそのままに描いた美しさ
アニメでは数多くの名シーンがありました。ガストンと野獣の戦いで野獣を殺すか逃がすかの選択を強いられた野獣がプロローグの曲と共に情を抱いてしまうシーン。
プロローグの曲とともに呪いが解けるシーン。ここで人気のある主題歌の曲が流れたら嫌だなーと思っていたのですが曲のセレクションもちゃんとアニメのままでした。
このプロローグに流れる曲は野獣の感情の変化や、物語の変化で流れる曲なんですよね。変な風に改変しないでくれて本当によかった!日本人だと主題歌とか流しちゃったりするから!
野獣の呪いが解けても全く違和感がない
視聴者は物語の構成上、ずっと野獣の顔を見ているので、人間の姿に戻ったとき「誰だコイツ?戻して!」ってなるかなあと思ってたんですけど人間の姿に戻っても「野獣だ」と思ってしまう自然さがありました。
目の色を確認しなくてもなんとなく野獣だって分かってしまうんです。不思議なものですね。上手いつくりだなーって思いました。
人によっては元に戻ったら意味ないじゃんって思う人もいるでしょうけど、元に戻らなかったら死んでますからねえ。彼。そういった意味でも本当に呪いが解けてよかった。